2020
9/22
配偶者居住権等について(その6)
こんにちは。 今回は前回の続き配偶者居住権等の税法上の評価の最終回となります。
前回は前提条件となる基礎的数値を求めました。
耐用年数:71年
経過年数:11年
存続年数:15年
複利現価率:0.642
法定利率:3%
なお、蛇足になりますが、敷地利用権と敷地所有権は言い回しが良く似てますので両者を
混同しないようにしてください。
(ステップ1)配偶者居住権の評価
上記を前述の算式に当てはめると次の通りになります。
(ステップ2)建物所有権の評価(子)
建物の相続税の評価額からステップ1で求めた配偶者居住権評価額を差し引いて求めます。
相続税評価額20,000,000円―配偶者居住権評価額10,370,000円=建物所有権評価額9,630,000円
(ステップ3)敷地利用権の評価(配偶者)
こちらも前述の算式に当てはめると次の通りになります。
相続税評価額30,000,000円―相続税の評価額30,000,000円×複利現価率0.642
=敷地利用権評価額19,260,000円
(ステップ4)敷地所有権の評価(子)
最後に土地の相続税の評価額からステップ3で求めた敷地利用権評価額を差し引いて求めます
相続税評価額30,000,000円―敷地利用権評価額19,260,000円=敷地所有権評価額10,740,000円
以上で全ての評価額を求めることができました。
いくつか注意点を申し上げます。
①配偶者居住権等は令和2年4月1日以降に相続、遺贈又は贈与により取得した財産について
適用できます。
②配偶者居住権等の明細書の提出が必要です(耐用年数や生命表及び複利現価表が示されて
おります)。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/pdf/1470-16-1.pdf
③配偶者居住権等の設定に関しては登記が必須です。
④上記の設例ではシンプルな例で計算を行いまししたが、共有名義の場合や賃貸に供している
場合は別途規定があります。
最後にこの制度についての個人的な所感を述べますと、割引計算で法定利率を使用するのは
理論的にややどうかなって思っております。法定利率はどうしても市場資金の貸付け金利をベース
としており、利回りとして低めに出るので、配偶者居住権や敷地所有権が高めに算定されてし
まい、配偶者への課税が大きくなる可能性があると言えるからです(理論的には不動産投資の
平均利率5%程度などの方が理論的には好ましいような気がします)。
もっとも、配偶者は別の制度(配偶者控除)で優遇されておりますので、複利現価率が低めの
方が多くのケースの相続全体の税金負担の軽減という観点で見れば好ましいのかもしれません。
まあ、個人的な所感はあくまでも与太話の類なので無視してください(笑)。