2020
9/19
配偶者居住権等について(その2)
こんばんは。 ブログの投稿について、民法の記述が多いことについて相談者やお客さん からご質問を受けることがあります。私が公認会計士試験を受験したのは もうずいぶん前のことになり、当時は受験科目について選択科目を経済学、経営学、 民法の3つから2つ(注 現行の公認会計士試験は選択科目は1つ)取る必要があり ました。多くの受験生は経済学と経営学の2つを選択していたのですが、私は法律が 好きだったこともあり民法と経営学を選択いたしました。特に民法は法律構成という 屁理屈がとても性に合ったのか他の会計科目を差し置いて得意科目であったくらいです。 当時は「民法なんて選択しても将来役に立たないよ」と受験仲間に揶揄されたものです が、当時学習した知識が今になって非常に役に立っており民法を選択して本当に良かっ たと思っております。 前置きが非常に長くなりましたが、今回は改正民法の配偶者居住権について 民法の条文をかいつまんでもう少し説明いたしましょう。 民法1028条は、被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始 の時に居住していた場合において、その居住していた建物の全部について無償 で使用及び収益をする権利を取得する、としこの条文で配偶者居住権を定めて おります。 次に民法1030条は、配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする、とし 配偶者居住権は配偶者が生きている間のみ有効であることを明示しております。 さらに民法1032条第2項は、配偶者居住権は、譲渡することができない、とし 配偶者居住権が一身専属権(配偶者しか行使できない譲渡不可の権利)である ことを明示しております。 いろいろ書きましたが、配偶者居住権とは配偶者がその配偶者の死亡後も 自分が死ぬまで住み続けることができる譲渡不可の権利ということができます。 (今日は最低限これだけ覚えておいていただければ結構です。) なお、配偶者居住権が認められるためには①遺産分割で配偶者が居住権を 取得するか②配偶者居住権が遺贈の目的とされることのどちらかが必要で す。つまり遺産分割協議か遺言書によって配偶者が居住権を取得すること が必要となります。 最後に補足説明を2点行います。 この配偶者居住権についてですが、登記が必要となります。もし、登記しないと 売却されたときに、売却先の人に対して配偶者居住権の存在を主張できなくなり ます(そのまま住み続けることができなくなる)ので、登記は必須です(民法1031条)。 また、配偶者居住権と似たような制度に配偶者短期居住権という制度があります。 これは、配偶者が相続開始時に被相続人の所有する建物に無償で住んでいる場合、 少なくとも相続から6か月間は引き続きその建物に住んでも良いですよという 権利です(民法1037条)。特に登記や遺言等も必要ありません。単に相続開始時に 配偶者が無償で住んでいれば認められる権利です。